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慰謝料増額や示談交渉など弁護士の役割を分かりやすく解説

交通事故に遭った時の慰謝料の相場は?慰謝料をできるだけ増やす方法

警察庁の発表によると、平成30年5月中に発生した交通事故の件数は35341件。1日平均では1140件にも及びます。

「警察庁交通局交通企画課 交通事故統計(平成30年5月末)」

交通事故の被害者となった場合、問題となるのが慰謝料の請求です。実はこの慰謝料、請求の仕方によって金額が大きく変わってくる可能性があるのです。

ここでは交通事故の慰謝料の相場や計算の仕方、どうすれば慰謝料を増額できるのかという方法についてご説明していきます。

1.交通事故の3つの慰謝料とは

交通事故でケガを負ったり死亡したりした場合、相手方にその損害の賠償を請求できます。損害は、財産的なものと精神的なものに大きく分けられ、そのうち精神的損害を賠償するのが慰謝料です。慰謝料は、何の損害を対象とするかによって3つの種類に分かれます。

(1)入通院慰謝料

まず、交通事故を原因として生じたケガで入院や通院をした場合に請求できる慰謝料を、「入通院慰謝料」といいます。これは入通院に掛かった治療費や、本来なら入通院をしている間に稼げたはずの収入の賠償ではありません。

あくまでも、入院や通院をしなければならないようなケガを負ったことによる精神的な苦痛を埋め合わせるための賠償金です。

(2)後遺障害慰謝料

次に、交通事故を原因として生じたケガによって後遺障害が残った場合の慰謝料を「後遺障害慰謝料」といいます。ケガそのものではなく、手や足を切断したとか痺れが残ったとか、そういった障害による精神的な苦痛を埋め合わせるための賠償金で、入通院慰謝料とは別に請求できます。

後述しますが、自賠責保険が傷害と後遺障害とを分けて保険金を規定していることもあり、別個に捉えたほうが馴染むという事情もあります。

(3)死亡慰謝料

さらに、交通事故によって死亡した場合の慰謝料を「死亡慰謝料」といいます。ここで気になるのが、これは誰の精神的損害を埋め合わせるための慰謝料なのか、という点でしょう。負傷による慰謝料も後遺障害による慰謝料も、本人の苦痛を慰撫するためのものです。しかしこの場合、埋め合わせを受ける対象であるはずの本人は亡くなっています。

これについては、2つの対象があります。1つは死亡した本人に対する慰謝料であり、もう1つは遺族(近親者)に対する慰謝料です。

まず、本人は交通事故で死亡する際に精神的苦痛を受けているだろう、と推定され、その時点で慰謝料の請求権は発生しています。ただし、請求主体である本人は亡くなっているため、その請求権が遺族に相続されるのです。

次に、遺族は被害者本人が亡くなったことにより精神的苦痛を受けますので、それを埋め合わせるための慰謝料請求権が発生します。なお、被害者が死亡した場合のみ、本人以外の近親者にも慰謝料を請求する権利が生じるのは、民法第711条に定めがあるからです。

他人の生命を侵害した者は、被害者の父母、配偶者及び子に対しては、その財産権が侵害されなかった場合においても、損害の賠償をしなければならない。
参考:民法 第七百十一条(近親者に対する損害の賠償)

2.慰謝料を計算する基準とは

慰謝料というのは精神的な苦痛、つまり心のダメージをケアするためのものです。ところが、心のダメージは外から見て形や重大さがわかるようなものではありません。そこで、慰謝料の額を決めるのには一律の基準が必要となります。慰謝料の相場についてみる前提として、慰謝料額を算定するための3つの基準について確認しましょう。

(1)自賠責保険基準

自賠責保険とは、「自動車損害賠償責任保険」の略称です。自動車損害賠償保障法(自賠法)という法律において、自動車は自賠責保険に加入していなければ運転してはならない、と定められています。そのため、自賠責保険は一般に「強制保険」とも呼ばれているのです。

自動車は、これについてこの法律で定める自動車損害賠償責任保険(以下「責任保険」という。)又は自動車損害賠償責任共済(以下「責任共済」という。)の契約が締結されているものでなければ、運行の用に供してはならない。
参考:自動車損害賠償保障法 第五条(責任保険又は責任共済の契約の締結強制)

自賠責保険は人身事故が起きた場合に支払われる保険で、事故が起きたらまずはこの強制保険金を請求することとなります。自賠責保険による基準(支払限度額)は、3つの中でもっとも低いものです。

(2)任意保険基準

人身事故の損害賠償額は、慰謝料も含めて非常に高額となることが多いため、自賠責保険金だけではカバーしきれない場合も少なくありません。そこで、自動車を運転する者は大抵「任意保険」に加入します。これは強制保険の上積み保険のような役割を果たすわけです。この任意保険による基準を、「任意保険基準」といいます。

交通事故によって被害を受けた場合、まず先に自賠責保険金を請求します。そして損害賠償額がそれを超えていたら任意保険金を、なお不足するようであれば加害者に対して、請求することとなるのです。

任意保険による基準(支払限度額)は、自賠責保険基準よりは高く、次にご説明する弁護士基準よりは低いといえます。ただ、損害保険会社による独自基準であるため保険会社ごとに具体的な額が異なり、しかも基準が非公開なので算出が困難という問題点があります。

とはいえ、かつて全社共通の計算基準があり、現在でも各保険会社はそれを参考にしていると見込まれているので、一応の相場は出すことができます。

(3)弁護士基準

弁護士基準とは、弁護士会ないし裁判所の基準であり、自賠責基準や任意保険基準よりも金額としては高めです。その理由は、自社の利益を考慮しなければならない保険会社の用いる基準と異なり、弁護士会が裁判例などを参考に出している弁護士基準は、公正さや客観性が重視されるからです。

弁護士基準に関しては、日弁連交通事故相談センター(日本弁護士連合会)において、二年ごとに『交通事故損害額算定基準』(通称「青本」)が発表されています。これは、最新の判例・裁判例の分析や経済の状態を踏まえた上で改訂されています。

また、『民事交通事故訴訟 損害賠償額算定基準』(通称「赤い本」)というのもあり、これは日弁連交通事故相談センター東京支部が毎年2月に発表しているものです。参考となる裁判例、東京地裁の実務に基づいた賠償額の基準が掲載されており、専門家向けの解説書です。

参考:公益財団法人 日弁連交通事故相談センター 青本・赤い本のご紹介」

これらの書籍により、弁護士基準を知ることができます。自賠責保険基準と比べると、約2倍ともいわれるほどの差があります

3.慰謝料の相場と計算方法

慰謝料を計算する基準についてみたところで、今度は3種類の慰謝料の相場と、それぞれの具体的な計算方法を知っておきましょう。

(1)入通院慰謝料

財産に対する損害賠償とは異なり、慰謝料の場合は、入院や通院に対して感じた苦痛の量を個別具体的に算定するのは不可能に近いものです。

もちろん、負傷の程度や病院までの距離、抵抗感などを細かく検討できればいいのですが、全国で毎日平均1600件以上もの交通事故が起きている以上、1件1件をじっくり精査することはできません。

そこで、入通院慰謝料に関しては、治療や通院に要した期間によって一律に計算するという方法が採られています。これも自賠責保険基準、任意保険基準、弁護士基準によって分かれているので、それぞれをみていきましょう。

①自賠責保険基準

  • 治療期間(初診から治療が終わるまでの日数)
  • 実際の通院日数×2

このいずれか少ないほうに4200円を掛け合わせた額が、入通院慰謝料です。4200円というのは、「自動車損害賠償責任保険の保険金等及び自動車損害賠償責任共済の共済金等の支払基準」(支払基準)によって定められている慰謝料の日額です。

参考:平成13年金融庁・国土交通省告示第1号(支払基準)

たとえば、治療期間が90日で、実際に通院した日数が25日だったとします。この場合、90日と25×2=50日のうち、50日のほうが少ないため、これに4200円を掛け合わせ、21万円が慰謝料となるのです。

②任意保険基準

上でもご説明した通り、任意保険基準は保険会社ごとに異なり、また非公開となっているため、正確な慰謝料額の算定は困難です。ただ、自賠責保険基準と比べた場合におおよそ1.3~1.5倍、弁護士基準と比べた場合はおおよそ0.7~0.8倍というのが目安となるでしょう。

③弁護士基準

弁護士基準での入通院慰謝料の算定には、多くの場合、上述の『民事交通事故訴訟 損害賠償額算定基準』の上巻に記載されている図表が用いられます。弁護士基準の図表は、入通院が1ヶ月単位で定められており、総じて自賠責保険基準や任意保険基準よりも慰謝料が高く算定されることが見て取れます。

弁護士基準の図表には、通常の傷病に対するものと、むち打ち症で他覚症状(他者から見て捉えられる客観的症状)のない場合に対するものの2種類があります。いずれも入通院期間もしくは実際に通院した日数を慰謝料算定の基礎とします。

原則としては通院期間が算定の基礎となりますが、例外的に、通院期間を限度として、通常の傷病では実通院日数の3.5倍程度、むち打ち症など他覚症状のないときには実通院日数の3倍程度で慰謝料計算を行います。

(2)後遺障害慰謝料

後遺障害にも比較的重度のものから軽度のものまであります。そこで、後遺障害の程度を等級によって区分することで、財産的損害の賠償である逸失利益や精神的損害の賠償である後遺障害慰謝料の金額を算定するのです。

後述するように、後遺障害の損害賠償を請求するためには、後遺障害等級認定を受ける必要があります。そして、認定された等級に従い、それぞれ自賠責保険基準や任意保険基準、弁護士基準に基づき定められている金額が慰謝料額となるのです。

等級は後遺障害の重い順に第1級から第14級まで区分されています。第14級であれば自賠責保険基準で32万円、弁護士基準で110万円であり、第1級であれば自賠責保険基準で1100万円、弁護士基準では2800万円というように、2~4倍ほどの差が生じ得ます。

(3)死亡慰謝料

死亡慰謝料の場合、入通院のような「期間」や後遺障害のような「程度」が問題となることはありません。しかし、その代わりに「本人の慰謝料」と「近親者の慰謝料」を別に考える必要があり、また用いる基準によっては死亡した「本人の立場」も慰謝料額を増減させる要素となる点に難しさがあります。

では、3つの基準からの死亡慰謝料額をみていきましょう。

①自賠責保険基準

亡くなった本人の慰謝料は、一律で350万円と算定されます。

また、近親者(父母・配偶者・子)の慰謝料は、人数によって変わります。遺族が1名の場合は550万円、2名の場合は650万円、3名以上の場合は750万円です。さらに、被害者本人に被扶養者がいた場合は、これらの金額に200万円が加算されます。

以上は上掲の「支払基準」に定めがあります。

②任意保険基準

任意保険基準では、被害者本人の立場によって死亡慰謝料の額が変わってきます。一家の支柱、すなわち稼ぎ頭の場合は高額であり、高齢者の場合はやや少額に、配偶者や子供の場合はその中間くらいの額と算定される傾向にあります。推定としては、本人と近親者の慰謝料を合わせて1200万円~2000万円ほどとされますが、個別具体的な事情によって増減します。

③弁護士基準

同様に弁護士基準でも被害者本人の立場で死亡慰謝料額が変わります。本人と近親者の慰謝料を合わせると、一家の支柱であれば2800万円、配偶者などであれば2500万円、高齢者であれば2000万円前後が目安となり、任意保険基準と比べてもさらに高額となる場合が多いです。

これもまた個別の事情によって増減するので、事故後にどのような対応を取ったかが重要となります。

4.症状ごとの慰謝料について

入通院慰謝料は、治療や入通院に要した期間を基にして一律に算定します。しかし、あくまでも精神的苦痛に対する慰謝料ですから、症状によって額が変わる余地はあります。

加えて、弁護士基準では症状によって採る算定表が異なることもあるため、症状もまた慰謝料に影響を及ぼす要素といえます。そこで、代表的な交通事故の症状と慰謝料の関係をみていきましょう。

(1)むち打ち

むち打ちとは、頭部への衝撃によって首が挫傷したり捻挫したりすることをいいます。交通事故の際は身体に大きな衝撃が加わるため、むち打ち症が非常に起きやすいのです。

むち打ち症の場合、慰謝料額は他の症状に比べて安くなるのが一般的です。なぜかというと、むち打ちによって表れる症状は痛みから痺れまで多様であり、症状の出る身体の部位も様々なため、現に生じている症状が交通事故を原因とするものかどうかがわからないからです。

財産的・精神的損害のいずれも、賠償を受けるには事故との因果関係が必要です。むち打ち症は交通事故との因果関係を証明しにくいため、慰謝料は一律に安く算定されることとなります。

具体的には、たとえば1ヶ月の通院の場合、通常の傷病なら28万円であるところ、むち打ち症なら19万円となり、かなり金額に差が出ます。

(2)骨折

骨折もまた交通事故で多く見られる傷病です。骨折にも単純骨折から複雑骨折や圧迫骨折、粉砕骨折まで程度の差があります。レントゲン写真などで証明のしやすい骨折は、通常の算定表が用いられるため、むち打ち症などに比して慰謝料は高くなりがちです。

また、治癒しても骨が歪んで付着してしまったり、神経を傷つけて麻痺が残ったりするケースもあります。こうした場合は、後遺障害として等級認定を受けることで慰謝料の増額を図ることとなるでしょう。

(3)その他(火傷・傷痕が残る場合など)

交通事故によって火傷を負ったり、顔面などの目立つ部位に傷痕が残ったりした場合は、後遺障害として慰謝料を請求することになります。傷痕によって直接的に身体の機能が害されているわけではなくとも、精神的なダメージは負うと考えられるため、後遺障害として扱われるのです。

特に外貌の傷痕は醜状障害ともいい、かつては男女で等級が分かれていましたが、平成22年の改正で平等に扱われるようになりました。

具体的には、

  • 7級12号が「外貌に著しい醜状を残すもの」として409万~1000万円
  • 9級16号が「外貌に相当程度の醜状を残すもの」として245万~690万円
  • 12級14号が「外貌に醜状を残すもの」として93万~290万円

の後遺障害慰謝料額となります。

5.交通事故の慰謝料を増額させる方法

交通事故の慰謝料には、入通院・後遺障害・死亡のそれぞれに対し、自賠責保険基準・任意保険基準・弁護士基準があり、それらを基に金額が算定されることがわかりました。

ただ、慰謝料は心の問題でもあり、領収書に従って支払われるようなものではありません。被害者側の主張の仕方によって増えることもあれば減ることもあるのです。

では、慰謝料の増額を求める方法としてはどのようなものがあるのでしょうか。

(1)弁護士に依頼する

第1に、弁護士に依頼することです。これには様々な理由がありますが、何と言っても大きいのが、弁護士に依頼することで、もっとも慰謝料の算定額が高くなる弁護士基準が適用になるという点です。

通常、慰謝料を含めた損害賠償額について示談交渉を行う相手は、加害者ではなく保険会社です。保険会社としてはなるべく支払額を少なく抑えたいため、任意保険基準を適用しようとしてきます。そして保険会社の担当者は、交通事故の示談交渉を専門として数多く手がけるプロであることが多いです。

つまり、専門家ではない被害者側が単に「弁護士基準でお願いしたい」と主張したところで、認められないのです。弁護士がついていると、示談がまとまらなければ民事訴訟で争うこともある、という姿勢のアピールになります。そのため保険会社も「どうせ裁判になるのなら、弁護士基準を受け容れて訴訟のコストを回避しよう」となるわけです。

上でご説明した通り、弁護士基準によると自賠責保険基準の2~3倍、任意保険基準と比べても1.2~2倍くらいの増額が見込めるため、影響は大きいといえます。

(2)弁護士費用特約を用いる

弁護士に依頼するとしても、肝心の弁護士費用はどうなるのか、というのが気になります。増額分が弁護士への報酬に消えてしまうのなら意味がないのではないでしょうか。

もちろん、仮に増額分が弁護士費用で消えてしまったとしても、自分で全て調べて手続きや示談交渉を行うよりは、時間と労力の節約になります。ですが、唯一のネックと思われる弁護士費用も、「弁護士費用特約」によって実質無料にできる可能性があります。

そこで第2として、弁護士費用特約によって費用負担を軽減し、手元に残る慰謝料を増やす方法が挙げられます。

弁護士費用特約とは、自動車保険におけるオプションであり、弁護士費用を300万円まで保険会社が負担するというものです。細部は保険会社ごとに約款で取り決められていますが、基本的には交通事故の弁護士費用が300万円を超えることはありませんので、実質的に費用負担なしといえるでしょう。

交通事故に遭ったら、弁護士へ依頼すると共に、ご自身の加入している保険契約を確認するようにしてください。弁護士費用特約をつけていれば、それだけ負担が減ります。

(3)すぐに診察を受ける

忘れてはいけない点として第3に挙げられるのが、速やかに診察を受けることです。
これには2つの意味があります。

まず、入通院慰謝料の算定方法は入通院の期間を基礎とするため、治療期間が長ければ長いほど慰謝料も増えます。逆に、苦痛を我慢して自宅で自然治癒を待っていたとしても、慰謝料額の算定においては考慮されないのです。

次に、後遺障害の場合に適切な等級認定を受けるには、診断書が不可欠です。交通事故によって傷病がもたらされ、それが後遺障害として残るという経緯を辿る以上、事故と傷病の因果関係を示すため、直ちに医療機関での診察を受けることが大事です。

(4)きちんと治療を継続する

入通院慰謝料は治療期間を基に算定するので、治療の開始時だけではなく終了時も重要です。ある時点から、治療を続けても大幅な快復が見込めなくなりますが、この段階を「症状固定」といいます。

保険会社はなるべく早く症状固定を医師に診断してもらい、治療期間を短くしようとします。しかし、十分に治りきっていない状態で症状固定としてしまうと、慰謝料額などが低くなる上、後遺障害の等級認定時にも影響が及ぶのです。

そこで第4として、症状固定を焦ろうとせず、まだ快復の見込みがあるならきちんと治療を続けることを挙げておきます。

(5)傷病の重さを主張する

第5に、症状が重い場合はしっかりとその点を主張しておくべきです。入通院慰謝料は、確かに期間に応じて算定されますが、実は症状が重い場合、2割程度の加算があるのです。

とはいえ、具体的にはどう主張すればいいのかが難しいので、医師や弁護士と相談しながら傷病の程度を示す証拠を用意するとよいでしょう。

6.後遺障害と等級認定

上でもご説明しましたが、後遺障害の損害賠償を請求するためには、後遺障害等級認定を受ける必要があります。後遺障害慰謝料とも密接に関連しますので、簡単にみていきましょう。

(1)後遺障害等級認定とは

後遺障害とは、交通事故と因果関係のある、症状固定状態の障害で、自賠法施行令の等級に当たるものをいいます。この等級は「後遺障害」が第14級まで、「介護を要する後遺障害」が第2級までの計16級に分かれています。

参考:自動車総合安全情報 後遺障害等級表

損害保険料率算出機構が、被害者又は加害者の請求によって、症状固定時に認められる後遺障害を等級のいずれかに認定するのが後遺障害等級認定です。

(2)後遺障害等級認定の流れ

等級認定の簡単な流れは以下の通りです。

  1. 交通事故後に医療機関で診察を受け、後遺障害診断書を作成してもらう
  2. 加害者の加入する自賠責保険会社に対して、必要書類を提出する
  3. 保険会社から損害保険料率算出機構の自賠責損害調査事務所に請求書類が送られる
  4. 自賠責損害調査事務所で調査をし、保険会社へ報告する
  5. 報告に基づき、保険会社が保険金の限度で被害者に支払いを行う

参考:損害保険料算出機構

症状固定の診断を受けたら、医師に後遺障害診断書を作成してもらいましょう。保険会社に連絡し、所定の手続きをすることで、後遺障害慰謝料が支払われます。

7.慰謝料請求を確実に行うには

以上から、慰謝料は請求の仕方によって額が相当異なることがおわかりでしょう。最後に、慰謝料の請求を確実に行うにはどうするのがいいか、まとめておきます。

(1)証拠をきちんと用意する

被害者側としては事故により心身にダメージを受け、示談や裁判のことなどすぐには考えられないかも知れません。しかし、慰謝料を始めとする損害賠償を請求するには、事故と損害との因果関係を示すことが不可欠です。そのため、証拠はきちんと確保しておきましょう。

具体的には、交通事故証明書や診断書、後遺障害診断書、事故に関わる出費の領収書などが挙げられます。

(2)保険契約の確認と弁護士費用特約

自身が加入している保険契約の確認も重要です。特に、相手方が保険に未加入だった場合に利用できる「無保険車傷害保険」や、弁護士費用が300万円まで保険会社負担となる「弁護士費用特約」は非常に役立つので、活用することを推奨します。

(3)弁護士への依頼

法的な専門知識を有していない場合、交通事故の後処理に関する手続きを被害者本人が全て行うのは困難です。

特に、弁護士を入れて示談交渉に臨むことで、被害者にとって有利な弁護士基準を算定の基礎とすることができますし、各種証拠を保全しておくことも、万一の時に訴訟へと移行することも、スムーズにできます。

弁護士費用特約をつけていなかったとしても、損害賠償の増額分で弁護士費用を賄えてプラスが出ることは珍しくありません。慰謝料を確実に請求するのであれば、弁護士事務所に相談してみるといいでしょう。

まとめ

事故のダメージを大きく受けている被害者にとって、慰謝料は心の損害を埋め合わせ、社会生活や日常生活に復帰するための大切な原資となります。

いくら請求する権利があるといっても、加害者側や保険会社がいろいろと教えてくれるわけではありません。専門家の知識や判断を味方につけ、望ましい額の慰謝料を手にされることを祈っております。

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